🔄 最終更新日 2018年10月5日 by takara_semi
特性関数と確率密度関数
特性関数は、その確率分布を完全に定義する関数で、確率密度関数の代わりに特性関数を解析・計算することで、その特性を調べることができます。また、複雑な確率密度関数の計算も、特性関数の性質を利用すれば、計算が容易にできることがあります。本記事では、そのような例についても見ていきます。
ガンマ分布の特性関数
確率密度関数から特性関数を求める例題として、ガンマ分布を扱います。ガンマ分布は以下の確率密度関数で定義されます。
\begin{equation}
f(x)=\frac{1}{\Gamma(k)\theta^k}x^{k-1}e^{-\frac{x}{\theta}}
\end{equation}
$\Gamma(x)$はガンマ関数、$k>0$は分布の形状を決めるパラメータ(形状母数)、$\theta>0$はスケールを決めるパラメータ(尺度母数)です。上式の確率密度関数から特性関数$\phi(t)=\int_{-\infty}^{\infty}e^{itx}f(x)dx$を求めます。
\begin{eqnarray}
&\phi(t)&=\int_{-\infty}^{\infty}e^{itx}f(x)dx\\
&=&\int_{0}^{\infty}e^{itx}\frac{1}{\Gamma(k)\theta^k}x^{k-1}e^{-\frac{x}{\theta}}dx\\
&=&\frac{1}{\Gamma(k)\theta^k}\int_{0}^{\infty}e^{-(\frac{1}{\theta}-it)x}x^{k-1}dx
\end{eqnarray}
ここで$(\frac{1}{\theta}-it)x=z$と変数変換すると、$dx=\frac{1}{(\frac{1}{\theta}-it)}dz$より
\begin{eqnarray}
\phi(t)&=&\frac{1}{\Gamma(k)\theta^k}\frac{1}{(\frac{1}{\theta}-it)}\times\\
&&\int_{0}^{\infty}e^{-z}\frac{1}{(\frac{1}{\theta}-it)^{k-1}}z^{k-1}dz\\
&=&\frac{1}{\Gamma(k)}\frac{1}{\theta^k(\frac{1}{\theta}-it)^k}\times\\
&&\int_{0}^{\infty}e^{-z}z^{k-1}dz\\
&=&\frac{1}{\Gamma(k)}\frac{1}{(1-i\theta t)^k}\Gamma(k)\\
&=&\frac{1}{(1-i\theta t)^k}
\end{eqnarray}
つまり、確率密度関数$f(x)$の特性関数は$\phi(t)=\frac{1}{(1-i\theta t)^k}$と求めることができます。このようしてに、確率密度関数から特性関数を計算することができます。
特性関数の性質を利用した確率密度関数の計算
続いて、特性関数から確率密度関数を計算する方法を考えます。例として特性関数が
\begin{equation}
\phi(t)=exp(-3it-4t^2)
\end{equation}
となる確率密度関数$f(x)=\frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}\phi(t)e^{-itx}dt$を求めていきます。
\begin{eqnarray}
f(x)&=&\frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}\phi(t)e^{-itx}dt\nonumber\\
&=&\frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}e^{-3it-4t^2}e^{-itx}dt\nonumber\\
&=&\frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}e^{4((it)^2-(x+3)it}dt\nonumber\\
&=&\frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}e^{4(((it)^2-\frac{(x+3)}{4}it)}dt\nonumber\\
&=&\frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}e^{4(it-\frac{(x+3)}{4})^2-\frac{(x+3)^2}{16}}dt\nonumber\\
&=&\frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}e^{\frac{(8it-(x+3))^2}{16}-\frac{(x+3)^2}{16}}dt\nonumber
\end{eqnarray}
ここで$8t=z$と変数変換すると、$dx=\frac{1}{8}dz$より
\begin{eqnarray}
f(x)&=&\frac{1}{\sqrt{16\pi}}\int_{-\infty}^{\infty}e^{-\frac{(z+(x+3)i)^2}{16}}dz\times\\
&&\frac{1}{\sqrt{16\pi}}e^{-\frac{(x+3)^2}{16}}\\
&=&\frac{1}{\sqrt{16\pi}}e^{-\frac{(x+3)^2}{16}}
\end{eqnarray}
つまり、特性関数$\phi(t)$の確率密度関数は$f(x)=\frac{1}{\sqrt{16\pi}}e^{-\frac{(x+3)^2}{16}}$と求められます。このようしてに、特性関数から確率密度関数を計算することができます。
特性関数の性質を利用した計算法
ここでは、先の例題と同様、特性関数が
\begin{equation}
\phi(t)=exp(-3it-4t^2)
\end{equation}
であり、確率変数$X$がこれに従う場合において、$X$のindependent copyの和で表現された確率変数$X_1+X_2+X_3$の従う確率密度関数を、特性関数の性質を利用して簡単に求めます。特性関数は独立確率変数$X_1,…,X_n$に対して、$X_i$の線型結合の特性関数がそれらの積となります。この性質より、$X_1+X_2+X_3$の従う確率密度関数の特性関数$\phi_{X_1+X_2+X_3}(t)$は
\begin{eqnarray}
&&\phi_{X_1+X_2+X_3}(t)=\phi(t)^3\\
&=&exp(-3it-4t^2) \times 3\\
&=&exp(-9it-12t^2)
\end{eqnarray}
となります。そこで、先と同様の計算を行うと、$X_1+X_2+X_3$の従う確率密度関数$f_{X_1+X_2+X_3}(x)$は$f(x)=\frac{1}{\sqrt{16\pi}}e^{-\frac{(x+9)^2}{48}}dt$と求められます。このように、特性関数の性質を利用することで、一見複雑な確率変数の従う確率密度関数を、簡単に計算できる場合があるのです。