好きこそ物の上手なれ。夢を持つと成績が伸びる。

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🔄 最終更新日 2020年4月9日 by takara_semi

偏差値教育の陥穽

日本人ほど優秀な民族は他にないと感じる一方で、近年の日本人は、意欲や好奇心が減退しているようにも感じます。この意欲や好奇心の減退の主な要因の一つに「偏差値教育による野性の欠如」が考えられます。偏差値教育の全てを否定するわけではありませんが、日本の将来を担う学生の湧きたつ意欲の減退を見過ごすことはできません。

さらに、自立しない学生と、自立させない家庭の問題もあります。これらが原因で学生が「独自の生き方の方法論」を見出すことなく、社会に出てしまう事も多くなっているのではないでしょうか。そうして「生き方を他人に任せた指示待ち人間」の印象を与えてしまう学生たちが「ゆとり世代」や「さとり世代」だと一括りに非難されているように感じます。この社会問題の解決に有効な手立てはあるのでしょうか。

自分だけの将来を計画する

一つの提案として、学生一人一人が「自分が決めた将来を計画する」ということが考えられます。あなたの夢は何でしょうか。その夢は自分自身が本当に願っているものでしょうか。

「自分が決めた夢や目標があるだけで成績が伸びる」という研究報告があります。例えば、目標を手書きするだけで、そうでない場合と比較して、その達成率が42%も上昇したという報告があります。目標を心に決めると、それに関する情報を自然と吸収しやすくなるのです。何をしたいのかが決まれば、達成までの過程が見えてきます。過程が見えれば、目前の達成目標も見えてきます。そうして、自然と、目標を達成するための行動を選択することができるようになるのです。

ここで大切なのは、自分自身の欲する目標を持つことです。他人が決めた目標では駄目なのです。そして、その目標を心の中に持ち続けることも大切です。そのために、自分が決めた目標を「手書き」するのです。そうすることで、自立心が養われ、欠落していた夢に対する野性を取り戻し、独自の生き方の方法論を見出すこともできるでしょう。

自分の夢に誇りを持つ

如何にして、人生の指針となるような「自分なりの夢」を持つか、その方法を考えると、感性や想像力を磨くことが大切なのだと思います。そうすることによって、柔軟で適応的な思考回路が培われ、日常に疑問を抱いたり、社会と自身との関係を俯瞰的に捉えることができるようになり、前述した偏差値教育や家庭の問題への依存が小さくなることで、自分の確かな意思や判断を以って、自身が活躍する将来や夢を思い描くことができるようになるでしょう。

また自身の夢を計画するための一つのヒントとして「徹底的に自分の興味を追求して、どうやってそれを社会に役立てるのかを熟考する」というのも有意味であると思います。そして、自分の夢に誇りを持ち続ける姿勢が、学生本人が納得のいく未来へと導いてくれるのではないでしょうか。

なにより「好き」が一番

ここでもう一つの研究報告を紹介します。「将来の明確なビジョンがある」という人よりも「好きだからやっている」という人の方が、出世する割合が15%ほど高いというのです。この結果は「将来の夢を持つ」ことを否定する結果ではありません。ここで言われている「将来の明確なビジョンがある」というのは、世間や環境などの外的要因による動機も含まれています。ここまでの話で大切なのは「自分の夢」を持つことです。

他人から指示されなくとも湧きたつやる気を「内発的動機づけ」と言います。達成欲求や親和欲求、回避欲求、権力欲求などがそれに当たります。内発的動機による勉強は、そうでない場合と比較して、やる気が長期間持続すると言われています。勉強の理由をあれこれこじ付けしている人ほど、長期的にはいい結果が得られません。つまり「自分の夢に向かって、好きだから勉強している」という人が最も効果的に学習できる人だと言えます。初めは「いい点が取れて気分がいい」などのシンプルな理由で十分です。そして勉強が好きになり、自分の夢を見つけることもできれば、その時にはきっと、学ぶことが楽しくて仕方がないという人になっていることでしょう。

私自身、自分の掲げた夢に誇りを持ち、それを実現するためにも、今一度「心の帯」をギュッと締めて、今の若者がこれからの日本を支えていくのだと気合を入れ直そうという気概でいます。学校教育の枠に囚われない自由な発想と強い好奇心を持って、学生各々が素晴らしい夢を叶え、日本を牽引する人物となっていく未来を共創していきたく思います。

<参考文献>
[1] Barbara P. and Allan P.,” The Answer: How to take charge of your life & become the person you want to be”, Orion, (2016).
[2] Wrzesniewski A., Schwartz B., Cong X., Kane M., Omar A. and Kolditz T., ”Multiple types of motives don’t multiply the motivation of West Point cadets”, Proc Natl Acad Sci USA, vol.111, pp.10990-10995, (2014).(PDF)
[3] Ryan R. and Deci E.L., “Intrinsic and extrinsic motivations: classic definitions and new directions”, Contemp Edu Psychol, vol.25, pp.54-67, (2000).(PDF)

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takara_semi
著者紹介 旧帝大卒.自然科学/社会学/教育学/健康増進医学/工学/数学などの分野、および学際的な研究領域に興味があります.

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