世界に誇るクールジャパンを守る柔軟な知財。

知財
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🔄 最終更新日 2020年4月9日 by takara_semi

クールジャパンを発信するクリエイティブ産業課

日本は世界的な知財立国です。少し古いデータになりますが、2014年時点でGDPはおよそ500兆円。そのうち貿易によるものが200兆円、自動車産業がその1割の20兆円程度の規模となっています。そして何と言っても注目すべきは、デザインやアイデア等の無形の貿易輸出市場(著作権・商標権等による利益)が2兆円にも上ることです。

これはアメリカに並ぶ数字で、日本が如何に優れた著作物やアイデアなどを生み出しているかが分かります。さらに、経済産業省は2011年に新しい課として「クリエイティブ産業課」を設置しました。本課は、例えば日本独特の「かわいい」文化や「おたく」文化などの「クールジャパン」と呼ばれているコンテンツを世界に売り出すことを業務の一つとしているのですが、ここから日本が如何に形の持たない文化やアイデアなどのコンテンツを対外的に売り出す事業に力を入れようと試みているかが読み取れます。

イノベーションを守る知財

このような無形の財産は、その複雑性と波及力の高さから、知財(知的財産権)によって権利を守る必要の強い部類に当たります。日本はアメリカに並ぶ無形の貿易輸出市場を持ち、また省庁が新たな課の設立に踏み出すほど創造的な産業の重要性を認識し推進していることから、日本が世界的な知財立国であることが分かります。

これら無形のコンテンツである「アイデア」や「文化」等による創造的な活動は、イノベーションに繋がり得る強力なコンテンツとなるものも少なくありません。そのため、これらを如何に促進し、また保護するかが大きな課題となります。何故なら、イノベーションは安心してイノベーションを起こせる環境にあってこそ生まれ、また生み出そうとする者も現れるからです。そこで重要な役割を果たすのが知財です。知財は知識の不正使用を防ぐことで、イノベーションを促進することができるからです。

書籍の試し読み機能の是非

一方で、強力な知財は競争を妨げ、市場の独占による経済成長への悪影響も考えられます。さらに問題なのは、知財が効力を失う場合もあるということです。例えば、書籍通販サイトに広く実装されている「試し読み機能」は著作権を持つ者の意思に反して半強制的に行われた部分があります。近年ではネット通販サイトで書籍を扱ってもらえないと売り上げが伸びないため、試し読み機能への反対派の多くの著作者はこれに同意するしかなかったのです。この例ではコンテンツを提供する側の権利は意味をなさない状況にあったと言えます。

このような、新しいアイデアやコンテンツを創造する人の権利が尊重されない状況では、クリエイティブな活動が衰退してしまいます。イノベーションを守るには、知的財産が高度に複雑化した現在社会に対して、その権利を上手く適用する方法を考える必要があります。

権利を主張しながら協力するための知財

未来の産業について考えると、企業は自社で全ての技術開発を行うという姿勢では生き残ることができなくなるでしょう。そうすると、他社との共同開発や技術共有、つまり「組み合わせ技術」によって、企業群として、高度に複雑化されたサービスを提供する企業体制が主流となってくることだと思います。このような産業体制においては、知財の持つ役割が益々強くなると考えられます。

先述の例では、国境をまたぐ企業間の権利の問題や、互いの技術利用に対するルールの制定、また技術の組み合わせによって生じたイノベーションの権利の問題等が発生すると考えられます。それらの問題に対して、例えばシリコンバレーのように、技術を盗まれることは当然承知の上で、それでも互いにより良いものを創りたいというような、非常に良い共同開発体制を築けるような制度を整備することができれば、日本企業のイノベーションや創作活動もより活発になるのではないでしょうか。

柔軟な知財が未来を創る

組み合わせ技術によるイノベーションの例を2つ挙げます。ひとつは東京オリンピック開催前に照準を合わせ、限界に達していた東海道本線の旅客輸送力改善を目的とした東海道新幹線の開通です。これは、それまで蓄積された技術のアイデアを駆使し開発されたものです。その画期的な輸送速度は、鉄道技術のブレークスルーであり、イノベーションでした。さらに、インターネット上のサービスで急速に拡大しているWeb.2.0は、検索サイトやソフトウェアの使用、広告ビジネス等の既存の技術を組み合わせることで多数のユーザーが参画し、そのデータの蓄積によって価値を高め、既存の概念を覆すようなイノベーションを起こしました。

ここから言えることは、知財は単に強い強制力を持って権利を守るだけでなく、「組み合わせ」による自由な開発を許容する制度も必要であり、そのような「柔軟な知財」が必要とされているということでしょう。

急速なグローバル化に伴い、複雑化し、アイデアの持つ波及力が著しく向上した現代社会において、イノベーションを促進する枠組みの整備は困難を極めます。知財はその役割が益々強くなり,イノベーションを考える上でそれの与える影響は計り知れません。人がイノベーションを生み、知財がイノベーションを守る。そうして間接的に、人々が安心して柔軟な発想を社会に提唱していける環境作りが、知財立国日本が、世界を席巻するイノベーション先進国として発展し続けるために必要とされているのではないでしょうか。

<参考文献>
[1] 高橋健治, “夢、ヒラメキ、根気から生まれたイノベーション ―誕生のきっかけと人材育成策― “, 経営センサー(2007).(PDF)
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takara_semi
著者紹介 旧帝大学生。自然科学/社会学/教育学/健康増進医学/工学/数学など、および学際的な研究領域に興味があります。

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