グローバル化時代を生きる日本の戦略。

グローバル社会
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🔄 最終更新日 2020年4月9日 by takara_semi

グローバル化時代における日本の課題

本記事ではグローバル化時代における日本のイノベーション戦略を考える上で「途上国の中流層での新しい市場づくりの方法の模索」「企業の抱える過大な従業員の適正数への遷移方法」「開発速度を早める方法」の三つの問題の改善に焦点を当てて考えます。

途上国での新市場づくり

日本は少子高齢化問題を抱え国内の市場が低迷しています。従って、日本経済を活性化させるための一つの鍵は、国外の新たな市場を探求し、再び強い輸出部門を築くことにあると考えられます。ただし、次に顧客相手にすべきは、欧米ではなく新しい顧客である途上国で、中でも爆発的に成長している中流層が、グローバル市場の中の最もターゲットにすべき相手であると思います。しかしながら現在、日本においてそのような市場のニーズに応えようとする動きはあまり見られません。この巨大で未開拓な市場で、新たなニーズや価値をいかに生み出すかが今後の日本経済を大きく左右することは間違いありません。

過大な従業員とスマイルカーブ

次に、日本の大企業の抱える従業員数が過大で、企業の利益や発展の足かせとなっている問題があります。アップルやグーグル、マイクロソフトは日本の大企業と異なり、従業員をそれほど抱え込むことなく大きな価値を生み出しています。この結果の理解を助ける概念として「スマイルカーブ」というものがあります。この概念によれば「組み立て」作業は付加価値が生み出しにくい「谷」部分に相当し、開発や販売は付加価値を生み出しやすい「山」の部分に相当します。近年の急速な組み立て技術の進歩により、この「谷」がますます深くなり、組み立てにより生まれる付加価値は小さくなっています。

日本企業はこの「組み立て」作業の従業員を多く抱え込みすぎなきらいがあります。アップルは高い付加価値を生み出す「開発」や「販売(アップルストアの従業員の教育)」に力を入れ、組み立ては中国などに委託しています。このようなビジネスモデルによって、アップルは世界的な成功を収めている一方で、日本企業はこれを見誤り、抱え込みすぎた従業員とともに苦境に立たされているのではないでしょうか。

開発は爆発的なスピード競争

さらに、日本企業は開発のスピード競争で世界の企業に劣っているという問題があります。例えば日本の稼ぎ頭である自動車産業は、その開発に3~4年要するのが一般的で、開発期間が比較的長いため、日本は世界で戦うことができています。しかしながら、例えばスマートフォンにおいては、その開発期間は3~6か月程度です。その開発スピードに日本は追随できず、苦戦を強いているのが現状です。

この開発速度の遅さは、組織的・企業的な課題であり、先に述べた日本の大企業の過大な従業員数と深く関係します。つまり、開発に従事する人の肥大化と共に、意思決定に要する時間が増加し、世界の開発速度に対応できない体制となっているのです。このままでは近い将来、自動車産業においても、最も開発が困難であったエンジン部が、電気自動車が主流になることによって不要となり、開発期間が短くなることで世界的な競争で敗れ、衰退の一途をたどる可能性も考えられます。

また、競争の舞台はハードウェアからソフトウェアにシフトしています。ソフトの世界においては、常に世界レベルでの激しい市場競争にさらされ、開発速度はますます重要となります。今までの日本の産業のかたちでは、ムーアの法則に従うような、爆発的な成長についていくことができなくなってしまうことでしょう。

過去の成功を選択的に忘れる

ここからは、先に挙げた課題の解決方法について議論していきます。まず「途上国の中流層での新しい市場づくりの方法」に対する解決戦略としては、過去の成功を選択的に忘れるということが必要です。日本における経済の活性化を生んできたイノベーションの多くは、戦後復興需要期およびその後の活発な経済状況における高度な「ものまね」技術によって起こされてきました。しかし時代は変わり、これから必要とされるのは「独自」に開発する力です。つまり、アメリカ追随主義からの脱却と新たな日本の進むべき道の探求が必要なのではないでしょうか。

そのためには、日本企業の多くが持つ「過去の成功体験に基づく伝統的な考え方になじむ情報をとりわけ重視し、反対に伝統に疑問を呈する意見に対しては何であれ信用できないとする理屈を見つけようとする傾向」を見直す必要があります。そうすることで、新興国市場を理解するために必要となる、あらゆる可能性を受け入れる新しい企業としての「姿勢」が身に付くものと考えられます。その為に有効な戦略が「過去の成功を選択的に忘れる」ことでしょう。そうして初めて、偏見のない状態で新興国市場のニーズを評価することができるようになります。

流動的な労働者市場

次に「企業の抱える過大な従業員の適正数への遷移方法」に対する解決戦略としては、労働者市場に流動性を持たせる仕組み作りが必要だと考えられます。例えば、外国人や、これまで社内にいなかった特別なスキルを持つエンジニアの参画は、企業の多様化や活性化につながります。そして突出した技能やアイデアを持つ社員はスピンアウトできる環境を整備し、それを支援できるようなマネジメントモデルも必要でしょう。そうすることで、大企業が抱え込んだ多様で優秀な従業員にも刺激と異動の機会を与え、社会全体としての柔軟な対応によって企業を再構築する必要があるのではないでしょうか。

さらに、国の抱える問題(例えば少子高齢化問題,エネルギー問題等)に関する技術開発を徹底的に支援する枠組みを整備する戦略も本問題の解決に有効であると考えられます。アメリカはその豊富な国防予算を背景にした産官学連携のプロジェクトによって、DARPAを筆頭にコンピュータやインターネット、ロボット技術や宇宙技術などで破壊的なイノベーションを生み出し続けています。日本においても、医療や福祉分野に大きな国家的予算を集中的に充填することで、自由競争が活性化され、破壊的イノベーションが生まれ得るのではないでしょうか。このような国のバックアップを基幹に、民間移出や商業化の速度を速めることで、応用技術や新しいビジネスモデルが生まれやすい環境が促進され、世界で活躍する企業やアイデアが多く現れることで、労働者市場の流動性も活発化されるのではないかと考えられます。

スピンアウト制度やベンチャー支援の整備

最後に「開発速度を早める方法」に対する解決戦略としては、完璧さよりもスピードを優先する戦略が必要です。最初の市場を作ることは、将来のための種まきに等しいです。完璧な製品設計を事前に追究するのではなく、改善の余地を多く残したまま市場に出し、顧客の反応や、そのやり取りの中で、適正なレベルまで製品をブラシアップしていくような方針が、一つのビジネスモデルとして考えられます。市場に投入した製品が、本製品を製造する企業の標準からすればかなり荒い製品であっても、市場のニーズを早い段階で正確に掴み、新たな市場を作ることができれば十分です。その後、生み出した新たな市場において、より理想を追求した新製品を投入することで、シェアを拡大する事も可能です。

その実現には、少数精鋭の開発チームを作り、開発から市場投入までを最短で実行可能な研究開発体制を各企業内に持つことが有効でしょう。もしくは先に述べた、スピンアウトの制度や、ベンチャーを支援する社会システムの整備が必要となるでしょう。とどのつまり、労働者市場の流動性を高めることが、開発速度を速めることにも、過大な従業員数の問題解決にも、言えるのだと考えられます。世界の爆発的な開発スピードに対応していくためには、日本企業は安定ではなく常に大きく変化していくことが求められているのでしょう。

社会を変えるような新たな企業戦略は、成功例をただ繰り返せばいいというほど単純な話ではありません。新しい時代には新しいルールが生まれます。特に、これからの日本を担う次世代のリーダーには、海外顧客と自国でのニーズの違いの把握や、開発速度の重要性の理解、新興国市場は別世界だという認識などが必要となるでしょう。

またある日本企業で「インターネットは不要だ」と上層部が判断してしまった例があると聞きます。その教訓として、ある技術に対して、今できるかできないかではなく、これが出てきたらどのように社会が変わるのかということを想像することが、革新を起こす上では肝要となります。さらに、一見使えないと思われたアイデアが、新技術などにより欠点であった部分が取り払われ、新たな革新につながる場合もあります。例えば通信回線の遅さがネックであったオンラインサービスは、近年ではその欠点が回線の高速化により見事にカバーされ、様々な新価値創造に成功しています。

つまり、伝統的な考えに固執したレンズで世界を見るのではなく、将来の社会の可能性を見通す先見性を持ったレンズを通して世界を眺め、そこから見える世界においてアイデアを考えることが、日本を支え世界を驚かせるような破壊的なイノベーションの創造につながるのでしょう。

<参考文献>
[1] ヴィジャイ・ゴーヴィンダラジャン, クリス・トリンブル, “リバース・イノベーション 新興国の名もない企業が世界市場を支配するとき”, ダイヤモンド社(2012).
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takara_semi
著者紹介 旧帝大学生。自然科学/社会学/教育学/健康増進医学/工学/数学など、および学際的な研究領域に興味があります。

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