1章:式と証明

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🔄 最終更新日 2023年5月30日 by takara_semi

1章:式と証明

本章では「式と計算」「等式・不等式の証明」について学習します.

式と証明

式と計算
(a) 3次式の展開と因数分解
3次式の展開は以下のような公式が知られている.

3次式の展開の公式

$(a+b)^3=a^3+3 a^2 b+3 a b^2+b^3$,$(a-b)^3=a^3-3 a^2 b+3 a b^2-b^3$
$(a+b)\left(a^2-a b+b^2\right)=a^3+b^3$,$(a-b)\left(a^2+a b+b^2\right)=a^3-b^3$


それぞれ,実際に計算をして,確かに成り立つことを確かめておきましょう.

また,展開から,以下の因数分解の公式が導かれる.

3次式の因数分解の公式

$a^3+b^3=(a+b)\left(a^2-a b+b^2\right)$,$a^3-b^3=(a-b)\left(a^2+a b+b^2\right)$
$a^3+3 a^2 b+3 a b^2+b^3=(a+b)^3$,$a^3-3 a^2 b+3 a b^2-b^3=(a-b)^3$


これらの公式は,展開の計算から明らかである.非常に有用な公式なので,正確に理解し,暗記しておくのがよいでしょう(忘れてしまっても,導けるようになっておけば安心です).

(b) 二項定理

二項定理の係数を理解するために「パスカルの三角形」が良く利用される.パスカルの三角形とは「数の配列は左右対称で, 各行の両端の数は1である.2行目以降の両端以外の数は, 左上
と右上の数の和に等しい.」という条件を満たしている,ピラミッド型の,数字で構成される三角形のことである.つまり二項定理より,
$(a+b)^1={ }_1 \mathrm{C}_0 a+{ }_1 \mathrm{C}_1 b$
$(a+b)^2={ }_2 \mathrm{C}_0 a^2+{ }_2 \mathrm{C}_1 $$a b+{ }_2 \mathrm{C}_2 b^2$
$(a+b)^3={ }_3 \mathrm{C}_0 a^3+{ }_3 \mathrm{C}_1 $$a^2 b+{ }_3 \mathrm{C}_2 $$a b^2+{ }_3 \mathrm{C}_3 b^3$
$(a+b)^4={ }_4 \mathrm{C}_0 a^4+{ }_4 \mathrm{C}_1 $$a^3 b+{ }_4 \mathrm{C}_2 $$a^2 b^2+{ }_4 \mathrm{C}_3 a b^3+{ }_4 \mathrm{C}_4 b^4$
$(a+b)^5={ }_5 \mathrm{C}_0 a^5+{ }_5 \mathrm{C}_1 $$a^4 b+{ }_5 \mathrm{C}_2 $$a^3 b^2+{ }_5 \mathrm{C}_3 a^2 b^3+{ }_5 \mathrm{C}_4 a b^4+{ }_5 \mathrm{C}_5 b^5$
が成り立つ.ここに現れる各項の係数を三角形状に並べると「パスカルの三角形」になる.図を実際に描いてみることで理解を深めることができる.

二項定理は,以下のようになる.係数部分が「パスカルの三角形」で示された数字と一致していることを確認しておきましょう.

二項定理

$(a+b)^n=$${ }_n \mathrm{C}_0 a^n +{ }_n \mathrm{C}_1 a^{n-1} b+{ }_n \mathrm{C}_2 a^{n-2} b^2 $$ +\cdots \cdots+{ }_n \mathrm{C}_r a^{n-r} b^r+\cdots \cdots$$+{ }_n \mathrm{C}_{n-1} a b^{n-1}+{ }_n \mathrm{C}_n b^n$

(c) 多項定理

より発展的な内容として,$(a+b+c)^n$ の展開式についても考える.$(a+b+c)^n$ の展開式の一般項は以下のようになる.

多項定理

$\frac{n !}{p ! q ! r !} a^p b^q c^r $$\quad \text { ただし } p+q+r=n$


これは次のように証明できる.
【証明】(同じものを含む順列の考え方)
$(a+b+c)^n$ を展開したときに出てくる1つの項は「$a, b, c$ の中でどれか1つを選ぶ」という操作を $n$ 回行って, 選んだものを全てかけあわせたものとなる.つまり,展開後は $a, b, c$ の指数の和が $n$ である項のみが現れ, $a^p b^q c^r$ の係数は $\frac{n !}{p ! q ! r !}$ となる.これは,$n$ 回のうちどの $p$ 回で $a$ を選び,どの $q$ 回で $b$ を選び,どの $r$ 回で $c$ を選ぶかの「パターンの数」であり「同じものを含む順列の公式」から分かる.

整式の割り算
(a) 整式の割り算

整式 $A$ を整式 $B$ で割った商を $Q$, 余りを $R$ とすると $A=B Q+R$ となる.ただし, $R$ は $0$ か, $B$ より次数の低い整式.

商と余りの関係

$A=B Q+R$

整式 $A$ を整式 $B$ で割った商と余りを求める計算では, $A, B$ を降べきの順に整理してから行う.

(b) 分数式とその計算

2つの整式 $A, B$ によって $\frac{A}{B}$ の形に表され, $B$ に文字を含む式を, 分数式という.

分数式の計算

$\frac{A}{B}=$$\frac{A \times C}{B \times C}$
$\frac{A}{B}=$$\frac{A \div D}{B \div D} (C \neq 0, \quad D \neq 0)$

$\frac{A}{B} \times \frac{C}{D}=$$\frac{A C}{B D}$
$\frac{A}{B} \div \frac{C}{D}=$$\frac{A}{B} \times \frac{D}{C}=$$\frac{A D}{B C}$

$\frac{A}{C}+\frac{B}{C}=$$\frac{A+B}{C}$
$ \frac{A}{C}-\frac{B}{C}=\frac{A-B}{C}$

また,分数式の計算では,部分分数に分解することがよくある.$a \neq b$ のとき以下のように,部分分数分解をすることができる.

部分分数分解

$\frac{1}{(x+a)(x+b)}=$$\frac{1}{b-a}\left(\frac{1}{x+a}-\frac{1}{x+b}\right)$

恒等式
(a) 恒等式の性質

恒等式の両辺が $x$ についての整式のとき,各辺で同類項を整理すると「両辺の同じ次数の項の係数は, それぞれ等しい.」ということが成り立つ.たとえば, $a, b, c, a^{\prime}, b^{\prime}, c^{\prime}$ を定数とするとき, 次のことが成り立つ.

$a x^{2}+b x+c=a^{\prime} x^{2}+b^{\prime} x+c^{\prime}$ が $x$ についての恒等式である
$\Leftrightarrow a=a^{\prime}, b=b^{\prime}, c=c^{\prime}$

$2 a x^{2}+b x+c=0$ が $x$ についての恒等式である
$\Leftrightarrow a=b=c=0$

(b) 恒等式の係数決定

(1) 係数比較法:両辺の同じ次数の項の係数を比較する。
(2) 数值代入法:適当な值を代入して, 連立方程式を作り, それを解く。 (逆の確認が必要)

等式の証明
(a) 恒等式の証明

恒等式 $A=B$ の証明方法

$A$ か $B$ の一方を変形して, 他方を導く.
$A$ と $B$ の両方を変形して, 同じ式を導く.
$A-B$ を変形して, $0$になることを示す.

2 条件つきの等式の証明

(1) 条件式を用いて文字を消去し, 1 で示した恒等式の証明方法で行う。

(2) 条件式が $\frac{a}{b}=\frac{c}{d}(\Longleftrightarrow a: b=c: d, a: c=b: d)$ のような比の值を用いた 式 (比例式) のときは, (比の值) $=k$ とおく。

7 不等式の証明

注以下では, とくに断らない限り, 文字は実数を表すものとする。

1 実数の大小関係

○ 2 つの実数 $a, b$ については, $a>b, a=b, ab, b>c \Rightarrow a>c$
$a>b \quad \Rightarrow a+c>b+c, a-c>b-c$
$a>b, c>0 \Rightarrow a c>b c, \frac{a}{c}>\frac{b}{c}$
$a>b, c<0 \Rightarrow a cb \Longleftrightarrow a-b>0$
$a0, b>0$ のとき $\quad a^{2}>b^{2} \Longleftrightarrow a>b, a^{2} \geqq b^{2} \Longleftrightarrow a \geqq b$

絶対值 $|a| \geqq 0,|a| \geqq a,|a| \geqq-a,|a|^{2}=a^{2},|a b|=|a||b|$

相加平均と相乗平均の大小関係

$$
a>0, b>0 \text { のとき } \quad \frac{a+b}{2} \geqq \sqrt{a b} \quad \text { (等号は } a=b \text { のとき成り立つ) }
$$


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takara_semi
著者紹介 旧帝大卒.自然科学/社会学/教育学/健康増進医学/工学/数学などの分野、および学際的な研究領域に興味があります.

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